大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗る女が現れ…。「違う羽の鳥」「憐光」など、全6編を収録。鮮烈なる“犯罪”小説集。『小説宝石』掲載を単行本化。
※一穂ミチ(2007年「雪よ林檎の香のごとく」でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題となった「イエスかノーか半分か」などボーイズラブ小説を中心に作品を発表して読者の絶大な支持を集める。初の単行本一般文芸作品「スモールワールズ」が本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞を受賞したほか、直木賞、山田風太郎賞の候補に。22年「砂嵐に星屑」が本屋大賞第3位、直木賞候補作。本作で第171回直木賞受賞)
●結末に温もり
パンデミック期の犯罪、つまり罪だからツミデミック、でいいのかな。
どれも半端ではない面白さ。なんてことのない書き出しだが、どんどんと引き込まれる。次に何が起こるんだろうとページをめくるスピードも早くなる。
死んだはずの同級生と出会う「違う羽の鳥」、主婦がイケメンのデリバリーにはまる「ロマンス」、幽霊が自分の過去を探る「燐光」、失業した夫が一攫千金を狙う「特別縁故者」、高校生の娘が妊娠する「祝福の歌」、見ず知らずの自殺志願者が集まる「さざなみドライブ」。どれもがあっと驚く結末を迎える。読み終えるのが惜しい。個人的には「特別縁故者」がいいかな。「祝福の歌」はちょっぴりホロリとした。
コロナ禍を描いているが、ラストは悲劇で終わらず、温もりがあるのがいい。
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