3月の東北。震災直後に殺人を犯してしまった真柴亮は、一通の手紙を手に北へ向かう途中、家族とはぐれた子供と出会う。一方、刑事の陣内康介は、津波で娘を失いながらも真柴を追い…。『週刊新潮』連載を加筆・修正。第173回(2025年)直木賞候補作で、この時は該当者なし。
※柚月裕子(1968年岩手県生まれ。山形県在住。2008年「臨床真理」で「このミステリーがすごい!」大賞しデビュー。13年「検事の本懐」で大藪春彦賞、16年「孤狼の血」で日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。ほかに「最後の証人」「検事の死命」「あしたの君へ」「慈雨」など)

●あまりに切ない幕切れ
2度、涙腺が緩むシーンがあった。ラストはきっと泣かせてくれるだろう。そう思ったが、あまりに切ない幕切れとなった。プロローグからは予想されたことだけど、やっぱりやるせない。救いは本当にあったのだろうか。
岩手県出身の柚月裕子さんは、自身も津波で両親を失っている。「より当事者寄りのひとりの人間として、真正面から小説に向き合う」。震災や津波、遺体安置所の描写は鬼気迫るものがあった。これは柚木さんが書かなければならない作品だったに違いない。
ただ、東北地方は土地カンがまったくなく、地名も架空なので逃亡ルートは想像もできなかった。なんとなくヒントがあれば北への逃避行にもっと感情移入ができたのに。
朝日新聞の「好書好日」によると、「結論は読者に委ねる」としつつ、作品の根底にはこんなメッセージを込めたという。「つらいこと、悲しみ、憎しみ、前に進めないときがあっても、人は何かに救われる。だから大丈夫」。
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