親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が一億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?
※桐野夏生(1951年10月7日、金沢市生まれ。成蹊大法学部卒業後、会社員を経てフリーライターになり、ロマンス小説やジュニア小説を手掛けたほか、レディースコミックの原作者としても活躍。「顔に降りかかる雨」でミステリー作家として本格デビューし、本作で第39回江戸川乱歩賞受賞。98年「OUT」で日本推理作家協会賞、99年「柔らかな頬」で直木賞。2003年「グロテスク」で泉鏡花文学賞、04年「残虐記」で柴田錬三郎賞、05年「魂萌え」で婦人公論文芸賞、ほかに「アンボス・ムンドス」「冒険の国」「東京島」など)

●乱歩賞にふさわしい作品
「ダークネス」(2025年7月)の書評を朝日新聞で読み、こりゃシリーズの最初から読まなくてはと、手にしたのが「女流ハードボイルド作家誕生!」と銘打たれたこの作品。その後「天使に見捨てられた夜」(1994年6月)、「ダーク」(2002年10月)と女性探偵・村野ミロシリーズは続き、「ダーク」で完結したはずが、20年後に「ダークネス」でミロが戻ってきたらしい。
広告代理店を辞め、「今はなんにも」していない村野ミロ。「なんにもしないで食えるなんて、いい身分ですね。そういう生活は、金がかかるでしょう」と成瀬に突っ込まれると、ミロはこう答える。「いいえ、私は自分をコントロールできますから、ほとんどかかりません」。ハードボイルドだが、そう言いながら調査の際に現金がなく、成瀬に10万円借りるのがなんだかとぼけてる。
元探偵の父親がいい味だしていると思ったら、その父親の活躍を描いたスピンオフ「水の眠り 灰の夢」(1995年)が刊行されていた。
ちょっとおどろおどろしい内容だが、引き込まれた。まさに乱歩賞にふさわしい作品。昭和世代としては懐かしく、何の違和感もなく物語に入っていけた。
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